みぎのほっぺに冬の夜

Träume sind Schäume.

帝国劇場の男の子 / Endless SHOCK -Eternal-

勝利が帝国劇場に帰ってきた。帝国劇場の板の上に立つ勝利は、まるで初めからそうであるよう設計されたみたいに「お誂え向き」で、帝国劇場は勝利のために、勝利は帝国劇場のためにあるのだと思った。

勝利が歌う、踊る、泣く、笑う、叫ぶ、慟哭する、そして「ショウリ」という役が育つ、その全てのために帝国劇場はあった。

 

<一幕>

Overture

スクリーンに映る「𝐒𝐡𝐨𝐫𝐢 𝐒𝐚𝐭𝐨」に何度でも涙が滲む。ショウリサトウ、佐藤勝利、勝利、ショウリ、しょうり…わたしたちの赤、わたしたちの麒麟の子。

 

Scene: 1 SHOCK Opening

人が次々と舞台上に姿を現す中、ショウリが上手からぬっと現れる。本当に「ぬっ」としか表現できない出方をする。舞台中、ショウリはいつも上手にいたような気がする。そんなことはないのだけれど。ここでも、ソリタリで出とちる時も、ジャパネスクで泣き叫ぶ時も、ずっと上手にいる。

このシーンは、とにかくリツキの美しさが際立つ。純白の礼服に漆黒の髪。幸運よ君と共に在れと願う。

(このシーンは本編とEternalでたぶん違うのだけど、基本パンフの表記に従います。わかりやすいので)

 

Scene: 2 Off Broadwayのショー

青いタキシードに身を包んだショウリが目が眩むほど好きだった。貴方、こんなにも青が似合う人だったのね!赤の貴方しか知らなかったから驚いた。世界の色は全て貴方が纏うために名付けられている。

 

Scene: 3 劇場のバックステージ

人類全員が好きな曲ことYMD。光一くんが言っていた、本編でのセリフの言い回しよりも強めに言っている、それだけ当時のカンパニーにとってコウイチの一つ一つの言動は影響の大きいものだったから、という話がとてもすき。事実は人の数だけあるのだ。

ショウリの、ワンモーションで木箱に飛び乗る身軽さがたまらなく好きだった。上手く表現できないけれど、普通だと①箱に飛び乗って、②立つ、だと思うんだけど、ショウリは飛び乗りながら立つ。その軽さが、一瞬だけ垣間見える勝利で、とても好きだった。

コウイチとリカがステージの中央で二人で歌う時、いそいそと梯子を運んで、二人を後ろから見ながら両手でハートを作るリツキが可愛くて大好き。集合写真の後にコウイチが座っていた真ん中の椅子に一人で座って、ショウリに頭を叩かれる流れまで含めて、清く正しく末っ子だった。

 

Scene: 4 劇場の屋上

屋上の下のダンサーの描写が大好きで、いつもそちらばかり見ていた。ONE DAYの音とシンクロしながら踊る彼女たちの美しさ。夢に向かう人は、誰しも絶え間ない努力に支えられているのだと実感する。努力が自分を裏切ることはあっても、努力した自分が自分を裏切ることはない。

 

Scene: 5 ニューヨークの街

Eternalにはない!(はず!)

 

Scene: 6 インペリアル・ガーデンシアター

MOVE ON。ショウリの、赤いライトの中黒く浮かび上がるシルエットが大好き。「受け止めてみよう」で目線は上を見ながら胸に手を当てて一礼し、皮肉な笑みを浮かべる。ここの表情が後半にかけてどんどん良くなっていて、「ショウリ」が育っているのを如実に感じた。声もとてもよく出ていて、降りかかるレーザーを浴びるショウリがとてもよかった。

ソリタリ。SHOCKが決まってから、ソリタリを出とちる勝利を見るのがずっと楽しみだったので、出とちるショウリを見られただけで感無量だった!出とちるショウリは暴れる暴れる。不服を体全体で示す。そして退場。

ソリタリは、ハラと愛リカがとにかくよかった。ハラ。ハラのソリタリを見ずには死ねない。そしてハラのソリタリを見て死ぬことは許されない。生命力、生命力、生命力!ハラが生命力を放たない瞬間なんてないのだけれど、ソリタリのハラは視線そのものが弾丸のように鋭くて、妖艶で、蠱惑的で、それでいて挑発的。ソリタリはハラを見る時間。愛リカは、拳銃を渡した後の類稀なる微笑みが忘れられない。何物にも変え難い微笑み。まるで今コウイチに手渡したものが花束であるかと錯覚するくらい少女のように、けれどはっきりと拳銃であることを思い出させる意志のある微笑み。

想像以上に広く奥行きのあるソリタリのフォーメーションも大好き。帝国劇場が大好き。

 

そして、独白。ソリタリ後の独白の時間が本当に本当に本当に大好きだったのだけど、これがソリタリ直後なのかバックステージを挟んだのか記憶が曖昧…。でもバックステージでブザーが鳴ってそのままジャパネスクだから、たぶんここのはず!

ここは、コシオカの独白があまりにもよい。「コウイチの放つ眩いばかりの光も、悲しいくらいの暗闇も、それを受け止められるのは俺しかいない」のセリフがあまりに好き!悲しい、は、哀しい、でも有り得ると思っている。そして、生命力に満ち溢れるあまり明らかに頭が真っ白になっていないハラが言う「頭が真っ白になって足が竦んだ」も味わい深くて好きだった。本当に、Eternalでしか見られないここのシーンの、みんなの抱える「虚」があまりにも好きだった。

 

Scene: 7 バックステージ

ショウリ、また暴れる。血気盛ん。

 

Scene:8 Japanesque Show

ジャパネスクのショウリの衣装がわたしはだ〜〜〜〜〜〜いすき……。毛皮からしか得られない栄養がある。Eternalは血飛沫は出ないけれど、その代わりショウリの後悔、絶望、絶叫があって、ライバルとしてのショウリにとってものすごく大事なシーンだった。「何を続けるって言うんだよ」というショウリの全身から放たれる慟哭が四ヶ月経った今も脳裏に焼き付いて離れない。ショウリというライバルの特筆すべき点は、その悲壮感であったと思う。コウイチに追い付きたい、でも追い付けない、なんで、どうして、俺はこんなにも、とショウリは泣きじゃくる。上手でぽつんと蹲り、子供のように泣き叫ぶショウリの悲哀から来る激情が、とてもとてもよかった。

 

<二幕>

Prologue

いつか本当にシェイクスピアを演じる勝利が見たい、と思う、最高のシェイクスピアシアター。大好き!

コウイチとショウリ、という華と華のぶつかり合いが、シェイクスピアにこれ以上ないくらい相応しい。特にハムレット。主題も相まって、二人が叔父と子あるいは父子に見えたし(役は逆だが)、「復讐」「叔父殺し」が明確な像として迫ってきた。怯え、惑い、恐怖するショウリの美しさと幼さ。ライバルショウリを堪能するシーン。

 

Scene:1 オーナーの劇場のバックステージ

Don't Look Back。コウイチとショウリが重なるように踊るのが印象深い。本編配信を見た時点で今年のSHOCKは「0番」と「0番」の衝突だ、と思ったけれど、それを一番に感じるシーン。まだ0番になる自覚のない未熟なショウリがコウイチを通して0番が何たるかを知っていくSHOCK。二人が「この舞台の0番」と「生来の0番」であることが逆説的に対比を大きくさせる。勝利にとって、このタイミングで形式上だけでも「0番ではない」立ち位置を演じられたことは、ものすごく大きくて、意義のあることなのではないかと思う。

 

Scene:2A インペリアルガーデンシアター

途中から演出が変更され、ショウリが加わるようになったHigher。変更前は皆が徐々にコウイチのパフォーマンスに参加していく中、最後まで曲に参加せず下手で項垂れていたショウリが、変更後は途中から参加し、コウイチと二人で並んで歌う、笑顔を見せながら!カンパニーが笑顔で客席に迫ってきて、大迫力の中ショウリがその輪に入っていく。最後はショウリがセンターで終わり、コウイチは一段上に一人、ショウリと重なるように立つ。ショウリが歓声に包まれながら仲間と共にステージを後にし、コウイチはただ一人ステージに残される。嗚呼。本当に素晴らしい、次のシーンに繋がる演出だった。変更前はコウイチとの刹那の共演の喜びとショウリの未熟さを感じさせるシーンだったものが、変更後はむしろショウリだけでなくカンパニー自体がコウイチの不在を自ら乗り越え、新たな門出への希望や成長を感じさせるシーンになったと感じる。一方、コウイチがたった一人一段高いところに立ち、コウイチの位置にショウリが立ったことで、生者と死者の明確な境界線、生者に干渉できない死者コウイチの哀愁と孤独を感じさせるシーンとしても新たな意味を持った演出だったように思う。

このシーンの変更を光一くんは「勝利の努力と成長」と表現していた。ショウリではなく、勝利、と。

 

わたしはどの現場でも、「この瞬間にチケ代全額払ってもいい」と思える場面に出会えることが何よりうれしいのだけれど、SHOCKにおいてはHigherがそれだった。それになった、と言った方が正しい。そう言える場面になったことが何よりもうれしい。

 

Scene:2B バックステージ

ここはEternalではバックステージではない、はず。コシオカがショウリがちゃんとスーツで来てくれて安心するシーン。ショウリの花束からみんなが花を次々取るシーン。このシーンに繋げる意味でも、Higherにショウリが混ざることは必要不可欠だった。

 

Scene3: It's A New World On The Earth

夢幻。ゆめまぼろしの美しさ。あんなに動いているのに、ものすごく静かな美しさ。お手本のようなシルエット。お手本なんだけれど、飛ぶために生まれたわけではない体で飛ぶコウイチ、美しかった。

太鼓前、コウイチとショウリが笑い合う。涙が出る。最初はバチに体を取られていたのに、日に日に己を制御できるようになったショウリに感極まる。

夢幻以降のショウリとリカのシンメが、震えるほどによかった。青と赤の紐を持ち、鏡のように踊る二人。リカは、勝利にとって生涯で出会う最初で最後のシンメなのだと思った。

そして夜の海のハラもまじでいい。これを見ずには死ねない。

 

Scene 4: フィナーレ

フィナーレはセットの美しさが本当によい。純白に包まれたカンパニーが、本編とはまた異なる、「3年後」の彼らであることもまた愛しい。コウイチの死を受け入れ、乗り越え、新たなスタートラインに立つ日のように思える。

 

Curtain Call

こんなに楽しいカテコも他にない。カテコの勝利は、何度見ても、そんなに?っていうくらい直角に肩に力が入っていて笑った。そんな勝利が大好きだよ。たくさん失敗して、たくさんもがいて、没入して、失敗する自分も肯定できるようになった2022年春。勝利がショウリに出会えてよかった。ショウリを連れてきてくれた春をずっとずっと覚えていたい。

 

 

本当は博多座を見る前に、帝劇だけの記憶で感想を一旦書き上げてしまいたかったのだけれど、博多座を見たことで逆にショウリというライバルについてもう一度客観的に振り返ることができてとてもよかった。し、帝劇期間中は身内目線でちゃんとできているか、自信を持てているかという気がかりが勝って気づかなかったけれど、わたしはショウリというライバルがとても好きだったのだということを知れた。

 

勝利のお星さまのような目が瞬く。世にも綺麗なお顔が劇場の照明を浴びて輝く。勝利にとって帝国劇場が、帝国劇場にとって勝利が、あまりにもお誂え向きで、この子は、ここに立つために生まれたのだと思う。わたしがヒロムであったとしても、必ず、必ず、全生命を持ってしても、この子をこの場所に立たせなければならないと思うだろう。

二ヶ月間、勝利は、ショウリとして、何度も何度も挑戦して、失敗して、その度に立ち上がってきたことが、光一くんの目にも、一観客の目にも明らかだった。ショウリが、打ち返してきてくれたことが、なによりもうれしかった。

 

勝利、ショウリ、素敵な春をありがとう!SHOCKと出会ってくれてありがとう!帝国劇場に帰って来てくれて、ありがとう!